レトロゲー名作劇場 走れシマウマ 第六話



「ああ、ほっかいしまうまさま。」
うめくような声が、風と共に聞えた。

「誰だ。」ほっかいしまうまは走りながら尋ねた。

「最近、今剣よりも蛍丸が良いと思い始めたフィロストラトスでございます。
 貴方のお友達黒猫派のセリヌンティウス様の弟子でございます。」

 

その若いSEも、ほっかいしまうまの後について走りながら叫んだ。

「もう、駄目でございます。むだでございます。走るのは、やめて下さい。
 もう、あの方をお助けになることは出来ません。」
「いや、まだ陽は沈まぬ。」
「ちょうど今、あの方が死刑になるところです。
 ああ、あなたは遅かった。おうらみ申します。ほんの少し、もうちょっとでも、早かったなら!」

「いや、まだ陽は沈まぬ。」
ほっかいしまうまは胸の張り裂ける思いで、赤く大きい夕陽ばかりを見つめていた。
走るより他は無い。
「やめて下さい。走るのは、やめて下さい。
 いまはご自分のお命が大事です。
 あの方は、あなたを信じて居りました。
 刑場に引き出されても、平気でいました。
 王様が、さんざんあの方をからかって『そもそも実妹エンドってキモくね?』と言っても、
 『俺の妹は黒猫だけ』とだけ答え、強い信念を持ちつづけている様子でございました。」
「それだから、走るのだ。
 信じられているから走るのだ。
 間に合う、間に合わぬは問題でないのだ。人の命も問題でないのだ。
 私は、なんだか、もっと恐ろしく大きいものの為に走っているのだ。
 ついて来い! 蛍丸派のフィロストラトス。」
「ああ、あなたは気が狂ったか。
 それでは、うんと走るがいい。ひょっとしたら、間に合わぬものでもない。走るがいい。」

ショタコン出没

 言うにや及ぶ。
まだ陽は沈まぬ。
最後の死力を尽して、ほっかいしまうまは走った。
ほっかいしまうまの頭は、からっぽだ。何一つ考えていない。
ただ、わけのわからぬ大きな力にひきずられて走った。
陽は、ゆらゆら地平線に没し、まさに最後の一片の残光も、消えようとした時、
ほっかいしまうまは疾風の如く刑場に突入した。間に合った。

 実はちょっと余裕があったので顔に泥を塗ったり霧吹きで汗を演出したりしてから刑場に入った。


「オイヨイヨ。」

と大声で刑場の群衆にむかって叫んだつもりであったが、喉がつぶれて嗄れた声が幽かに出たばかり、
群衆は、ひとりとして彼の到着に気がつかない。

すでに磔の柱が高々と立てられ、縄を打たれた黒猫派のセリヌンティウスは、徐々に釣り上げられてゆく。
ほっかいしまうまはそれを目撃して最後の勇、先刻、濁流を泳いだように群衆を掻きわけ、掻きわけ、

「私だ、刑吏! 殺されるのは、私だ。ほっかいしまうまだ。彼を人質にした私は、ここにいる!」
と、かすれた声で精一ぱいに叫びながら、ついに磔台に昇り、釣り上げられてゆく友の両足に、齧りついた。

群衆は、どよめいた。
あっぱれ。ゆるせ、と口々にわめいた。
黒猫派のセリヌンティウスの縄は、ほどかれたのである。

「セリヌンティウス。」
ほっかいしまうまは眼に涙を浮べて言った。
「私を殴れ。ちから一ぱいに頬を殴れ。
 私は、途中で一度、悪い夢を見た。よるのないくに2が発売延期という夢だ。
 君が若し私を殴ってくれなかったら、私は君と抱擁する資格さえ無いのだ。殴れ。」



 セリヌンティウスは、すべてを察した様子で首肯き、
刑場一ぱいに鳴り響くほど音高くほっかいしまうまの右頬を殴った。ポヨーン。
殴ってから優しく微笑み、
「ほっかいしまうま、私を殴れ。
 同じくらい音高くその前ヒヅメで私の頬を殴れ。
 私はこの三日の間、たった一度だけ、ちらと黒猫を疑った。
 生れて、はじめて二次キャラの嫁を疑った。
 黒猫がこのセリヌンティウスより京介を選ぶのではないかと疑った。
 君が私を殴ってくれなければ、私は君と抱擁できない。」

 ほっかいしまうまは前足に唸りをつけてセリヌンティウスの頬を殴った。

「ありがとう、友よ。」
二人同時に言い、ひしと抱き合い、それから嬉し泣きにおいおい声を放って泣いた。

 群衆の中からも、歔欷の声が聞えた。
暴君ディオニスは、群衆の背後から二人の様を、まじまじと見つめていたが、
やがて静かに二人に近づき、顔をあからめて、こう言った。

「おまえらの望みは叶ったぞ。
 おまえらは、わしの心に勝ったのだ。
 信実とは、決して空虚な妄想ではなかった。
 どうか、わしをも仲間に入れてくれまいか。
 どうか、わしの願いを聞き入れて、おまえらの仲間の一人にしてほしい。」

 どっと群衆の間に、歓声が起った。

「万歳、王様万歳。」
 
「さぁ、王様、仲間になった記念にこの機動戦士ガンダム バトルフォートレスでもやりましょう。」
ほっかいしまうまは提案した。
「なかなか出来がいいですよ! キャラゲーとゆめゆめ思わぬことです。」 

「よーしっ、王様 1万円ぐらい課金しちゃおうかなー?」

 しかししばらくして暴君ディオニスは激怒した。
暴君は必ず、かの邪智暴虐のゲームの開発責任者を除かなければならぬと決意した。


「クソゲーじゃねぇか!!!!! 
 課金してもそもそもエラーでゲームが動かねーし!!
 エラーだか何だか知らんがまともにプレイできねーじゃねーか! 
 兵士たち! このゲームの責任者を磔にするのだ!」

 ほっかいしまうまとセリヌンティウスは走った。今度は夕日が沈むより10倍は早く走った。


 終り
 
 とある民明書房刊の詩より








 注記
機動戦士ガンダム バトルフォートレスに関しては ゲームカタログさんの携帯機KOTYの情報鵜呑みなので
間違っていたらスミマセン。
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レトロゲー名作劇場 走れシマウマ 第五話



 ふと耳に、潺々、水の流れる音が聞えた。

そっと頭をもたげ、息を呑んで耳をすました。
すぐ近くで、試供品のエナジードリンクが配られているらしい。



よろよろ起き上って、見ると、エナジードリンクが配られている。
そのエナジードリンクの試供品に吸い込まれるようにほっかいしまうまは身をかがめた。
開けて、飲んだ。
ほうと長い溜息が出て、夢から覚めたような気がした。

歩ける。
行こう。
肉体の疲労恢復と共に、わずかながら希望が生れた。義務遂行の希望である。
わが身を殺して、名誉を守る希望である。
斜陽は赤い光を、樹々の葉に投じ、葉も枝も燃えるばかりに輝いている。
日没までには、まだ間がある。

私を、待っている人があるのだ。

新作ゲームがきっと期待通りのゲームだと少しも疑わず、静かに期待してくれている人があるのだ。

コンシューマーゲームは、信じられている。
コンシューマーゲームの命なぞは、問題ではない。
死んでお詫び、などと気のいい事は言って居られぬ。
コンシューマーゲームは、信頼に報いなければならぬ。

いまはただその一事だ。
走れ!シマウマ…うーん、あんまり走るとキツイから急ぎ足程度で。

 発売日に売れるゲームは信頼されている。
先刻の、あの悪魔の囁きは、あれは夢だ。悪い夢だ。
忘れてしまえ。五臓が疲れているときは、ふいとあんな悪い夢を見るものだ。
ほっかいしまうま、おまえの恥ではない。
やはり、おまえはロトの勇者のシリーズをプレイした者だ。
再び立って走れるようになったではないか。ありがたい! 
私は、愛と正義の大冒険のゲームをプレイすることができるぞ。
すごろクエスト ダイスの戦士たち はけっこうおもしろいと思います。



 ああ、陽が沈む。ずんずん沈む。

待ってくれ、光の神アウラよ。私は生れた時から正直なウマであった。
時間経過が存在しないレトロゲームのままでいてください。
でもドラクエぐらいの時間経過はあってもいいです。

 路行く人を押しのけ、跳ねとばし、ほっかいしまうまはピンクの風のように歩いた。

野原でモンスターハンターの、そのモンハンプレイのまっただ中を駈け抜け、
モンハンユーザーの人たちを仰天させ、なんかを蹴とばし、小川を飛び越え、
少しずつ沈んでゆく太陽の、十倍も早く走った。当社比。

 ほっかいしまうまは走った。

ファミコンカセット アルゴスの戦士~はゃめちゃ大進撃~ の背景の夕日が沈むより早く走った。
(時間経過の概念がないゲームなのでいつまでも沈まないのだが)

runzebra (1)



 一団の旅人と颯っとすれちがった瞬間、不吉な会話を小耳にはさんだ。

「いまごろは、あの黒猫派も、磔にかかっているよ。」

ああ、その男、その男のために私は、いまこんなに走っているのだ。
その男を死なせてはならない。
急げ、ほっかいしまうま。

おくれてはならぬ。

ファミリートレーナーで鍛えたその力を、いまこそ知らせてやるがよい。
風態なんかは、どうでもいい。
ほっかいしまうまは、いまは、ほとんど全裸体であった。いや、むしろいつも全裸であった。
二度、三度、歯茎から血が噴き出た。
安いかための歯ブラシ買ったらマジで硬くてびっくりした。

見える。

はるか向うに小さく、シラクスの市の塔楼が見える。
塔楼は、夕陽を受けてきらきら光っている。




レトロゲー名作劇場 走れシマウマ 第四話



「試遊台です。1人10分までです」
「何をするのだ。私は陽の沈まぬうちに王城へ行かなければならぬ。放せ。」
「試遊台です。1人10分までです」
「私にはレトロゲーをプレイする時間の他には何も無い。その、たった一つの時間も、これから王にくれてやるのだ。」
「試遊台です。1人10分までです」
「さては、王の命令で、ここで私を待ち伏せしていたのだな。」

 試遊台でいつまでも遊んでいる猛者たちは、ものも言わず一斉に
Wiiリモコンヌンチャクを振り挙げた。
ほっかいしまうまはひょいと、からだを折り曲げ、飛鳥の如く身近かの試遊台に襲いかかり、
そのリモコンを奪い取って、

「気の毒だが正義のためだ!」

と猛然一撃、たちまち、Wiiにラストストーリーを差し込み、
いつまでも遊んでいる猛者たちが3D酔いで苦しみ始めた隙に、さっさと走って試遊台コーナーを後にした。



 一気に試遊台のコーナーを駈けたが、流石に疲労し、折から午後の灼熱の太陽がまともに、
かっと照って来て、ほっかいしまうまは幾度となく眩暈を感じ、これではならぬ、と気を取り直しては、
よろよろ二、三歩あるいて、ついに、がくりと膝を折った。

立ち上る事が出来ぬのだ。

天を仰いで、くやし泣きに泣き出した。
ああ、あ、レトロゲーの濁流を泳ぎ切り、ここまで突破して来たほっかいしまうまよ。
ロトの勇者シリーズが好きな、ほっかいしまうまよ。
今、ここで、ラストストーリーに酔って動けなくなるとは情無い。
愛する友は、おまえを信じたばかりに、やがて殺されなければならぬ。

 おまえは、稀代の新作ゲーム不信の人間、まさしく王の思う壺だぞ、と自分を叱ってみるのだが、
全身萎えて、もはや芋虫ほどにも前進かなわぬ。

路傍の草原にごろりと寝ころがった。
身体疲労すれば、精神も共にやられる。
もう、どうでもいいという、勇者に不似合いな不貞腐れた根性が、心の隅に巣喰った。
私は、これほど努力したのだ。
約束を破る心は、みじんも無かった。神も照覧、私は精一ぱいに努めて来たのだ。
動けなくなるまで走って…いやそんなに走んなかったか。

2017ゲオGWセール

私は不信の徒では無い。
ああ、できる事なら私の発売日に新品を買ったレシートをお目に掛けたい。
愛と信実の感熱紙のこの新品購入のレシートを見せてやりたい。
けれども私は、この大事な時に、精も根も尽きたのだ。

私は、よくよく不幸なウマだ。私は、きっと笑われる。私の一家も笑われる。
私は友を欺いた。
中途で倒れるのは、はじめから何もしないのと同じ事だ。
ああ、もう、どうでもいい。
これが、私の定った運命なのかも知れない。
黒猫派のセリヌンティウスよ、ゆるしてくれ。俺妹ももうオワコンだし。
君は、いつでも私を信じた。
私も君を、欺かなかった。

私たちは、本当に佳い友と友であったのだ。

いちどだって、暗い疑惑の雲を、お互い胸に宿したことは無かった。
いまだって、君は私を無心に待っているだろう。
ああ、待っているだろう。
ありがとう、セリヌンティウス。
よくも私を信じてくれた。

それを思えば、たまらない。
友と友の間の信実は、この世で一ばん誇るべき宝なのだからな。

セリヌンティウス、私は走ったのだ。君を欺くつもりは、みじんも無かった。

信じてくれ! 私は急ぎに急いでここまで来たのだ。
濁流を突破した。
レトロゲー売り場コーナーからも、するりと抜けて一気に試遊台コーナーを駈けて来たのだ。
私だから、出来たのだよ。
ああ、この上、私に望み給うな。放って置いてくれ。
どうでも、いいのだ。私は負けたのだ。
だらしが無い。笑ってくれ。

王は私に、ちょっとおくれて来い、と耳打ちした。
おくれたら、身代りを殺して、私を助けてくれると約束した。
私は王の卑劣を憎んだ。
けれども、今になってみると、私は王の言うままになっている。
私は、おくれて行くだろう。

王は、ひとり合点して私を笑い、そうして事も無く私を
「新作ソフトは発売日に買うな」と放免するだろう。
そうなったら、私は、死ぬよりつらい。
私は、永遠に裏切者だ。地上で最も、不名誉のシマウマ種だ。

セリヌンティウスよ、私も中古か廉価版かパワーアップキットを待つぞ。
廉価版はバグとか不具合とかが取り除かれているにちがい無い。
いや、それも私の、ひとりよがりか? 

ああ、もういっそ、悪徳ウマとして生き伸びてやろうか。

村には坊ちゃんの家が在る。
稼働するツインファミコンもある。PCエンジンもまだまだ壊れないだろう。
正義だの、信実だの、愛だの、考えてみれば、くだらない。
ああ、何もかも、ばかばかしい。
煽り文ばっかりでゲーム内にはでてこないし。
どうとも、勝手にするがよい。やんぬる哉。

――四肢を投げ出して、うとうと、まどろんでしまった。

レトロゲー名作劇場 走れシマウマ 第三話



 そろそろ全里程の半ばに到達した頃、降って湧いた災難、ほっかいしまうまの後足は、はたと、とまった。
見よ、前方のハードオフを。

引っ越しシーズンで中古の物が大量に入り込み氾濫し、濁流滔々と売り場に集り、
猛勢一挙にほっかいしまうまの理性を破壊し、どうどうと響きをあげる物欲が、
木葉微塵に理性を跳ね飛ばしていた。

ほっかいしまうまは茫然と、立ちすくんだ。
珍しいレトロゲーの売り場はいよいよ、ふくれ上り、海のようになっている。
ほっかいしまうまは売り場にうずくまり、
男泣きに泣きながらに手を挙げて哀願した。

「ああ、鎮めたまえ、荒れ狂う物欲を! 時は刻々に過ぎて行きます。
太陽も既に真昼時です。あれが沈んでしまわぬうちに、王城に行き着くことが出来なかったら、
あの佳い黒猫派が、私のために死ぬのです。」

 物欲は、ほっかいしまうまの叫びをせせら笑う如く、ますます激しく躍り狂う。
欲は欲を呑み、捲き、煽り立て、そうして時は、刻一刻と消えて行く。
今はほっかいしまうまも覚悟した。

オフハウススキップ

見て回るより他に無い。ああ、ウィザードリィの神々も照覧あれ!
 
物欲にも負けぬ愛と誠の偉大な力を、いまこそ発揮して見せる。
ほっかいしまうまは、ざんぶと売り場の流れに飛び込み、
百匹の大蛇のようにのた打ち荒れ狂う

ファミコンカセット 
スーファミカセット
64カセットをカタカタと全てチェックして

8640円のメガCD2や5400円の3DOリアル2を相手に、必死の闘争を開始した。

満身の力を腕にこめて、押し寄せ渦巻き引きずる欲望の流れを、
なんのこれしき、お小遣いもあんまりないしと掻きわけ掻きわけ、
めくらめっぽう獅子奮迅のウマの子の姿には、神も哀れと思ったか、
ついに憐愍を垂れてくれた。

欲に押し流されつつも、見事、「でも今月は新作買うし」という結論に、すがりつく事が出来たのである。



ありがたい。

ほっかいしまうまは馬のように大きな胴震いを一つして、すぐにまた先きを急いだ。
一刻といえども、むだには出来ない。

陽は既に西に傾きかけている。
ぜいぜい荒い呼吸をしながら移動し、ほっとした時、突然、目の前にゲームの体験コーナーが躍り出た。

「試遊台です。1人10分までです」

レトロゲー名作劇場 走れシマウマ 第二話



「王様は、ゲームクリエイターを殺します。」
「なぜ殺すのだ。」
「クソゲーを作る、というのですが、誰もそんな、好んでクソゲーを作るゲームメーカーなど居りませぬ。」
「たくさんのクリエイターを殺したのか。」
「はい、はじめはスーパーモンキーが大冒険するゲームを。
 それから、操作性がやたら悪い現代戦のウォーゲームを。
 それから、物理で殴ればいいバランスの悪いゲームを。
 それから、たけしが挑戦するゲームの必勝本のスタッフを。
 それから、一番いい装備を頼んだゲームを。
 それから、40点満点の奇妙な冒険に課金するゲームを。
 さらに美少女戦国武将が異次元城に吸い込まれていなくなるゲーム会社の偉い人を。
 タツノコキャラが出てくる拠点運営ゲームを、
 その他まともに動かなかった基本無料ゲームの責任者を」

  

「おどろいた。国王は乱心か。」
「いいえ、乱心ではございませぬ。
 クソゲーを、楽しむ事が出来ぬ、というのです。
 このごろは、クソゲーばかり作るメーカーをも、お疑いになり、少し派手に
 課金システム満載のゲームを作っている者には、人質ひとりずつ差し出すことを命じて居ります。
 御命令を拒めば十字架にかけられて、殺されます。
 きょうは、クソゲーを作ったプロデューサーが六人殺されました。」
 
 聞いて、ほっかいしまうまは激怒した。
「呆れた王だ。生かして置けぬ。」


 ほっかいしまうまは、単純なシマウマであった。
ゲーム機本体とかを、背負ったままで、のそのそ王城にはいって行った。
たちまち彼は、巡邏の警吏に捕縛された。
調べられて、ほっかいしまうまの懐中からはゲームキューブ本体が出て来たので、騒ぎが大きくなってしまった。
ほっかいしまうまは、王の前に引き出された。

「このゲームキューブ本体で何をするつもりであったか。言え!」
暴君ディオニスは静かに、けれども威厳を以て問いつめた。
その王の顔は蒼白で、眉間の皺は、刻み込まれたように深かった。

「市を暴君の手から救うのだ。」とほっかいしまうまは悪びれずに答えた。

鎖分銅にリメイク

「おまえがか?」王は、憫笑した。
「仕方の無いやつじゃ。おまえには、わしの孤独がわからぬ。」

「言うな!」とほっかいしまうまは、いきり立って反駁した。
「クソゲーを嫌うのはゲーマーとして、最も恥ずべき悪徳だ。
 王は、発売日にゲームを買う人柱たちの心さえ疑って居られる。」
「新発売のゲームをクソゲーかもと疑うのが、正当の心構えなのだと、わしに教えてくれたのは、ゲームメーカーだ。
 豪華スタッフ とか
 あの名作の続編 とかは、あてにならない。
 人間は、もともと私慾のかたまりさ。信じては、ならぬ。」
暴君は落着いて呟き、ほっと溜息をついた。

「わしだって、面白いゲームを望んでいるのだが。」

「なんの為の面白さだ。自分の地位を守る為か。」 こんどはほっかしまうまが嘲笑した。
「罪の無い…とも言いかねるクリエイターやプロデューサーや経営者を殺して、何が平和だ。」

「だまれ、下賤の者。しかもよく見たらおまえ人ですらないじゃん」
王は、さっと顔を挙げて報いた。
「口では、どんな清らかな事でも言える。わしには、ゲームメーカーの腹綿の奥底が見え透いてならぬ。
 おまえだって、いまに、クソゲーを掴まされてから
 買ったその日に中古屋に持ち込んで、買い取りの数千円を
 手にして泣いて出てきたって聞かぬぞ。」
「ああ、王は悧巧だ。自惚れているがよい。
 私は、ちゃんとクソゲーをプレイする覚悟で居るのに。命乞いなど決してしない。ただ、――」
と言いかけて、ほっかいしまうまは足もとに視線を落し瞬時ためらい、
「ただ、私に情をかけたいつもりなら、処刑までに三日間の日限を与えて下さい。
 たった一人の十六才の内気な黒髪おかっぱ巨乳で剣道をしていて実は血がつながっていない妹(脳内設定)に、
 亭主を持たせてやりたいのです。
 三日のうちに、私は村で結婚式を挙げさせ、必ず、ここへ帰って来ます。
 あとハードディスクの中身を消したい」

「うん、ハードディスクは仕方ない。」
と暴君は、嗄れた声で低く笑った。
「でもとんでもない嘘を言うわい。逃がした子馬が帰って来るというのか。」

「そうです。帰って来るのです。」ほっかいしまうまは必死で言い張った。
「私は約束を守ります。私を、三日間だけ許して下さい。
 十六才(以下略 妹が、私の帰りを待っているのだ。
 そんなに私を信じられないならば、よろしい、この市に
 セリヌンティウスという桐乃より黒猫派のプログラマー(自称)がいます。
 私の無二の友人だ。
 あれを、人質としてここに置いて行こう。
 私が逃げてしまって、三日目の日暮まで、ここに帰って来なかったら、あの友人を絞め殺して下さい。
 たのむ、そうして下さい。」

 それを聞いて王は、残虐な気持で、そっと北叟笑んだ。
生意気なことを言うわい。どうせ帰って来ないにきまっている。
この嘘つきに騙された振りして、放してやるのも面白い。
そうして身代りの男を、三日目に殺してやるのも気味がいい。
そもそも12才のシマウマの妹が16才とか意味不明だし。
 ウマは、これだから信じられぬと、わしは悲しい顔して、その身代りの男を磔刑に処してやるのだ。
世の中の、正直者とかいう奴輩にうんと見せつけてやりたいものさ。

「願いを、聞いた。その身代りを呼ぶがよい。三日目には日没までに帰って来い。
 おくれたら、その身代りを、きっと殺すぞ。
 ちょっとおくれて来るがいい。おまえの罪は、永遠にゆるしてやろうぞ。」
「なに、何をおっしゃる。」
「はは。いのちが大事だったら、おくれて来い。おまえの心は、わかっているぞ。」

 ほっかいしまうまは口惜しく、地団駄踏んだ。ものも言いたくなくなった。

 竹馬の友、桐乃より(以下略 セリヌンティウスは、深夜、王城に召された。
暴君ディオニスの面前で、佳き友と佳き友は、二年ぶりで相逢うた。
ほっかいしまうまは、友に一切の事情を語った。
セリヌンティウスは無言で首肯き、ほっかいしまうまをひしと抱きしめた。
友と友の間は、それでよかった。
セリヌンティウスは、縄打たれた。ほっかいしまうまは、すぐに出発した。初夏、満天の星である。

 ほっかいしまうまは家に帰り、戦利品を起動チェックして整理して、一通りプレイしたあと寝た。
次の日は焼き肉の予定だったから家にいることにした。出かけていては焼きたての肉が食べられない。

 最終日、プレステ4を起動して一通りバージョンアップを確認して
やり終えてからほっかいしまうまは友が待つ処刑場へと向かった。
たしか原作では最終的に王様が感動して処刑は無しという方向で行くはずだから問題ない。

 途中で見つけた配管工のイタリア人から緑色の乗用恐竜を奪った。
夕日が見えるあたりで乗り捨てて行けば感動的なシーンとなるであろう。

runzebra (2)

プロフィール

ほっかいしまうま

Author:ほっかいしまうま
北海道出身のしまうま。
ほっかいしまえびと一緒に水揚げされた。
なんか古いテレビゲームが大好きらしいよ?

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